例えば、地球上からCO2とゴミが減り、そのゴミからエネルギーやおいしい野菜を作るための肥料が生まれるとしたら、地球の環境は素晴らしく変化すると思いませんか? こんな夢のような研究に取り組んでいるのが大場和彦教授です。
 大場教授の専門は農業気象学。近年、CO2が増えたことで地球は温暖化しているといわれますが、大場教授はそのことが植物にどんな影響を与えているのか、植物がどれくらいCO2を吸収しているのかということを研究してきました。長年そうした研究を続けるうちに、地球環境に関心が向くようになったと言います。地球規模で環境を変えるためにはどうしたらいいのか……大場教授の挑戦はここからスタートしました。
 環境問題の中でも現在大きな課題となっているのが下水汚泥の問題です。通常、下水は処理されてきれいな水に生まれ変わりますが、その過程の中でどうしても処理しきれないものが残ります。それが下水汚泥です。下水汚泥は日本の産業廃棄物の20パーセントを占めるともいわれていて、しかもその量は年々増える傾向にあります。各自治体はこの下水汚泥の処理や処分に頭を悩まされています。そうした中、近年はコンポスト化(下水汚泥やゴミなどの有機物を微生物により発酵させ堆肥化し、肥料や土壌改良材として農業用に再生利用すること)をはじめ、様々な取り組みが始動しています。
 大場教授の研究もこの下水汚泥が重要なカギとなります。そしてこの研究を説明するために欠かせないもうひとつのキーワードが三菱長崎機工(株)が開発した「メタサウルス」です。メタサウルスとは、下水汚泥を減量化、燃料化、肥料化するシステム(化学プラント)のこと。これまで産業廃棄物でしかなかった下水汚泥を再利用できる新しい処理施設の名称です。2012年、本学が立地する東長崎地区に誕生しました。
 しかし、これまでのシステムとメタサウルスは何が違うのでしょうか。大場教授はこう胸を張ります。「まずメタサウルスでは下水汚泥の量をこれまでの5分の1にまで減らすことができます。しかも今まで30日かかっていた処理がたった5日で可能になります。その上、処理中はCO2を排出することなく、処理の過程で出るメタンガスはメタサウルスを動かすためのエネルギーとして使えます。また余ったエネルギーは、農作物の肥料やビニールハウスの暖房用燃料として使うことができます。農学と工学の融合です!」
 東長崎地区ではすでに産業廃棄物の量が5分の1に減りました。もちろん、その分費用も節約できることになります。処理場の大きさもこれまでよりコンパクトにできることを考えると、まさにメタサウルスは長崎生まれの夢の農工連携システムといえそうです。